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No.478「霧雨に煙る」

No.478[霧雨に煙る]「さぶ!」
バスを降りた最初の一言はそれだった。
毎年恒例で年末年始を過ごす先へとやってきた。昼間はおかしな天気で心配していたが、夜になってかろうじて回復方向、でも小雨がたまに眼鏡に貼り付く。
「ちょっと時間早かったね…」
一緒にきたこいつが時計を見ながら言った。
「あ?あぁ、でも30分位だろ?行く前にちょっと腹ごしらえしてこうぜ」
「でもお蕎麦出るんだよね?今年も…」
行き先は毎年過ごす店、カウントダウンを皆でやる、その前に蕎麦食って、落ち着いたらジャムセッション…そして演奏に参加しない連中は近所の神社に行く…それがパターンだった。
「まぁ、それはそうなんだがな、それだけで朝までって訳にも行かないし」
「とか言って、お参りの後に屋台回るくせに…」
見事に読まれている…っつーか、いつもそのパターンだからしょうがないか。
「つーか、まずは温まりたいんだ」
この時期バスは空いている、暖房効果も上がらない。俺はずっと両手を足とシートの間に差し込んだままだった。
「薄着だからだよぉ」
「店に入れば逆に暑い位なんだし、これでいいんだよ」
おまけに酒も入るしな、今年は何やら樽から貰ってきたという日本酒もあるそうで、俺的には楽しみだったりもする。
そうは思ってても、どうせ最初はビールになるのだから、今は今としてとりあえず温まっておきたい。
「まぁ、そんなに食う訳でも無いし、な」
そう言って駅前のコーヒー屋を指差す。あと3時間もしない内に年越しになるというのに、元気に営業しているコーヒー屋だった。しかも元旦から営業だ。
「もー…」
苦笑いしながらも俺の横に着いてくる。
そんなこいつの足がふと止まった。
「ん?どした?」
「きれいだねー」
ロータリーの中の噴水、その中に立つ大きな木が電飾で飾られていた。もちろんこれも例年通りではあるのだが、今年は雪が降った後でもあったので、地面にもその光が反射している。
「今年も光ってるなぁ…」
「もうちょっと近づいてみようよ」
「こういうのは遠くから見てる方がキレイだ」
「えー…なんか、飴がブラ下がってるみたいでいいのに~」
おまえはこれを食うつもりか?
「電球が見えるだけだ、口にしたら感電するぞ?」
「こういうのは雰囲気が大事なのにぃ…」
まぁ、そもそも…その木の下辺りは溶けかけた雪やらでぐしゃぐしゃだ、こいつでは転びかねん…
「…しかし…飴ねぇ…」
思わず口元が緩んだ感じがした。
「え?何?」
「べーつーにーぃ♪」
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