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No.479「その彼女の名2nd」

No.479[その彼女の名2nd]「またここに来てたか…」
誰かが来た訳では無かった、自分が来ていた…いや、来たのか連れて来られたのか…その辺りの記憶は曖昧だった。
そして正面には記憶の中にある風景と…
「元気だった?」
「なんとか、困らない程度には…」
「おかしな返事だね」
よく知っている人、以前は近くによくいてくれた人。
「1年ご無沙汰…」
「また忘れられちゃったかと思ったよ?」
「いや、それは無い…コトにしておいてくれ」
結構弱気である。1年も放っておいたのは事実だったし。
「今回は俺から来たぞ」
そう、去年は確か突然現れてくれたのだった、この女性は…
「違うよ、また忘れそうな感じだったから、呼び込んだの」
胸張って言いますか?そこ?
「でも、懐かしい場所だ…」
「そうだね、ここで会ったんだよね…」
記憶に残る出会いの時、この女性は白いテラスに立ち、その周りを多くの木々や草花が囲み…
「あれ?」
「どうかした?」
「透けてないか?」
「はい?」
よく見れば彼女の後ろがぼんやりと見えている気がする…それに後ろのガラス戸に本人の姿が映っていなかった。
「不透明度パタメータが…」
「おかしなコト言ってるなぁ…大丈夫?」
「っつか、透けてるあなたの方が大丈夫なのか?」
「それは困ったねぇ…」
「だろ?」
既に足の先なんか地面に着いていなかった。これでは幽霊サンではないか…
「実は幽霊サンでしたか?」
その質問に彼女は肯定も否定もせず、まったく違う質問を俺に投げかけた。
「困ったのは君だよ?」
「え?」
「君が私を忘れかけているというコト」
「あ…」
そうだ、以前はいつでも近くにいてくれた筈の女性が、いつの間にか疎遠となり、今や1年に1度しか会えていない…いや、会えてないのではなく、俺が会おうとしていないのか?
鮮明に思い出せていた過去も、今や古くなった映画フィルムのように色が落ち再生までも波打つような…そんな記憶へと変わってしまっていた。
「君はやはり変わってない…」
「変わるも変わらないも、君の中にいるんだからね」
「そうだったな…」
「このまま私を描くコトすら忘れてったら、いつか消えちゃうかもしれないよ?」
「すまん」
自分が来たのか、連れて来られたのか?そんなコトに意味は無い、実は望むか望まないかだけの話…。
それだけのコトなのに、それがだんだん出来なくなってきている自分って何なのだろう?
「やっぱ私の名前も忘れちゃってんでしょ?」
「いや、それは大丈夫だ」
そう、この女性の名は…
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