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No.457「ちぃまま」

No.457[ちぃまま] 「ちーす」
「お、おはよー」
って、時間はもう21:00をまわっている。まぁ、でも、これがこーゆーライブハウスでの挨拶ってモンか。
ライブまではまだ時間があった。狭い店内では、今夜のメンバが小さなテーブルを囲み、楽譜を突き合わせながら曲順の確認をしている。
「ども、おはよーございますー」
「あ、来てくれた~おはよ~」
よく聴いてるため、いつの間にか顔馴染みになったミュージシャンとの挨拶…これも「おはよー」だ。
なんでこういう挨拶になるのか…いつの間にか自分でも使ってたいたが、何故かについて考えたコトは特に無かった。確かに皆、起きてから3~4時間位しか経ってない(深夜のジャムとかで、明け方までやって、昼に寝てたから)だろうし、今夜もこのまま朝までコースなのだろうし…でも中には昼間普通に生活している人もいるだろうし…多数決か?

「まぁ、悩んでも始まらん…」
そう勝手に納得し、いつもの席へと座った。
「いらっしゃーい」
聞き慣れない声に顔を上げると、カウンターの中には、湯気の立ち上るおしぼりを差し出している女の子が立っていた。
「あ…ども…」
おしぼりを受け取りながら思い出す…はて?誰だったっけ??昔ちぃままはいたが、だいぶ前に辞めちゃってるしなぁ…そもそも顔が違う…
「えと、ご注文は?」
ニコニコしながらの問いかけ。こう聞いてくるって事は、やはり会った事はない子だな。もしかしてマスター、アルバイトでも雇ったか?
「あ、ボトルあるんで、それをロックで…」
「ボトルは…えーと…」
その子は後ろを向くと、ボトルがズラっと並んだ棚を目で追う。
「変な形のヘンリー・マッケンナなんだけど」
「あ、これですね」
名前を聞いて即座に発見…あのボトルの列の中から一瞬で見つけるとは…お主意外とやるな。
そのまま女の子の手際を観察する。氷の砕き方、ロックグラスへの氷の入れかた、チェイサーの準備…更にオレンジまで切っている…そしてそれら一式が俺の目の前に並ぶ、その間約1分…
「見事だ…」
「え?何か?」
「いや、独り言です…気にしないでくだせぇ…」
俺はこの子のコトが気になり、マスターを手招きする。
「ん?何?」
「どうしたんですか?新しい女の子入れちゃって…しかも、随分と手馴れている感じだし…」
「いいだろ?新人さんだよ~♪」
「そりゃ判りますが…なぜにこの時期に雇いますか??」
「まぁ、見てれば判るよ」
「え?」
と、謎の言葉を残してマスターは戻っていった。見てればって一体何を…?

やがて時間となり、ライブが始まる。
最初はいつもの通り、テーマ演奏から入る、そしてその後はトークと…
「えー、皆さんようこそお越しくださいました♪」
「おわ!」
さっきまでカウンターの中に立ってた女の子がマイク握っている…
「マ、マスター?」
「いいだろ?新人さんだよ~♪」
「見てれば判るって、こういうコトっすか?」
「そ、ボーカル兼バーテン…」
「一石二鳥ですか?」
酒も手馴れていると思ったが、歌うのもかなり馴れている感じだ。つーか、かなりうまい…
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