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No.629「Trip in Autumn」

No.629[Trip in Autumn] ついこの間まで、まだ暑い日が~…とか思ってたのに、2週連続で台風がやってきて、明けたら秋に変わっていた…
「季節が感じられない…」
なんかこう、徐々に変わって行くような様を期待していた訳では無いけれど、コロっと変わられるのは全く期待していない。
「秋めいたね~♪」
「急にな…」
もう11月だ、確かに秋になってなきゃ困る。これでまだ暑さが残ってるようでは、それは異常気象である。
「だからと言って…」
「うん?」
「唐突に引っ張り出されるのも困る」
「部屋の中じゃ季節は感じられないよ?」
ご尤もであるが、朝いきなり"連休だー、いい天気だー(♪+はぁと)"と叫びながら押し掛けてきて、気が付いたら電車に押し込まれてて…
「何処なんだここわーっ!」
電車の中でしっかり眠ってたようだ…
「ね♪」
"ね♪"じゃなくて…はっ!
「?」
「こここ、こんな人気の無いトコで…ままま、まさか…」
一歩下がって身構えた。
「…」
「…」
「…本当にそうしようか?」
「…すみません、しないでください…」
どーゆー会話をしているんだ?俺たちは…
空は高く、日差しも強く、が、気持ちのイイ空気が流れる。
「映画みたいでしょ?」
「線路に入ってはいけないのだぞ?」
「ここ廃線だよ?」
真っ直ぐ伸びる古びた線路。
そのまま紅葉の木々の中に溶け込むかのような赤くなったレールの上を飛び跳ねている。
「そんな靴で危なくないか?」
「靴じゃなくて、ブーツね?」
「はいはい…」
どこでこんな場所を見つけてきたんだか…
かつてはホームがあったかもしれないような、土盛りされたトコロに上がり、指差し確認の真似事なんぞしとるし…
と、その指が俺を指して止まる…
「…」
「…」
「ややや、やはりっ!」
更にもう一歩後退…が、犬釘にカカトを引っかけ…
「…あー…空が…」
どこまでも広がっていそうな高い空に、彼女の笑い声が響いていた。
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