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No.504「風の色が変わった」

No.504[風の色が変わった] 「こない…」
約束した時間はとうに過ぎていた。
時間通りに来てくれるコトは滅多に無いだけに、ちょっと慣れてしまっているけど…
「暑い…」
暦の上では一応秋の季節…しかし、まだまだ残るこの暑さ…
秋が無いまま冬になるんじゃ?と心配しそうになる。
「まだ衣替えには早いよね…」
一応秋向けなんかも考えているけど、もしかしたら今年はその出費が無かったりして…
ある意味助かる話だけど、別の意味では寂しいお話…
炎天下の路上を避け、木陰に場所を移動…
ほんの少しだけど、抑えられる日差しによって、流れる風を感じるコトが出来る。
熱風とまではいかないけれど、それなりの生暖かさ…自分の真横に温風ヒータでもあるかと錯覚するような…
この間通過した台風の影響が、まだ残ってたりして…
揺れる木立ちの影が、路上の模様に演出を加えていた。

「…あ、来た来た…」
通りの向こうから走ってくる影1名。
この暑い中を走るくらいなら、最初から時間の余裕を持ってくれればいいのに…
なんて、思わず苦笑♪

「すみません、遅れました…」
額から汗を垂らしながら平謝り…路上に落ちた汗は、あっと言う間に消えてゆく。
「…いつも…ね…」
「うぅ、ごめんなさいごめんなさい~」
腰の角度がどんどん鋭角に近づく…
「おごり♪」
「…らせて頂きます…」
いつもこうやってお昼代を得している。
たまに逆パターンがあってもいいのに…と、思うけど、その実現はいつになるコトやら…
「では行きますか…何をお望みでせう?」
「おいしいお蕎麦♪」
「御意…」
そして私の手をとり踏み出す…
「…あ…?」
「は?何か?」
「…別に…行こ♪」

暦の上では一応秋の季節…しかし、まだまだ残るこの暑さ…感じていた風の色…
今ちょっと変わった気がした…
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