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No.499「Weather-bound」

No.499[Weather-bound] 「何か天気良くないですよね?」
休日練習に来ていたが、太平洋の波は高いらしく、潮ばかり受けてしまっていた。
以前のように、並みの当たらないトコロへと退避してみたものの、流石は休日で…
「あんなやつら、濡れ鼠になっちゃえばいいんだい…」
「ダメですよ、そんなコト言っちゃ…」
ダダこねてた俺だった。
「休日は仕方ないです」
「うぅ…」
留奈の方がよっぽどオトナに感じてしまう。
「ちょっと憧れます♪」
「…あい?」
「ダメですか?」
まぁ、女の子である…そういうのが気にならないコトも無いだろうけど、留奈の場合…
「…」
「敬さん?」
「…」
「あれ?」
「おろおろおろ…」
「え!?敬さん何泣いてるんですか!?」
すみません、絵が浮かびませんでしたヨ…
(俺のほうが濡れ鼠になってしまったではないですか…)
「な、なんでもない、なんでも…ただ想像が…」
「…」
「はっ!?」
「うぅ~…敬さんいじわるです…」
抗議の目を向けられてしまいました。
「でも周囲から見れば、私と敬さんも同じに見えてますよね♪」
「…あい?」
「てへっ♪」
そんな訳で、練習は一時中断し、生意気にも現在2名はコーヒーブレーク中…
だが、練習場所に近いコーヒー屋は、やはり濡れ鼠にさせたい連中で満杯だったため、ちょっと離れたコーヒー屋まで足を延ばしていた。
「でもお席はいっぱいでした…」
「さらりーまんさんが多いですね」
むしろビジネス街に近い方の店だったため、客層が一変していた。
そんな中に、ドでかいテナーケースを抱えた男女2名というのも…視線集中の格好の的、さっきの俺たちと立場逆であろう。
「ここ店内禁煙ですからね♪」
そう言われながら、スタスタと表へ…
「…」
お気遣い頂きましたか?留奈サマ…
「恐縮す…」
真に昨今の喫煙事情に、俺は泣かされっぱなしである。
とりあえずテイクアウトして、表でゆっくりと…幸いにして、ガーデン席には余裕があった。
(しかも喫煙可、寒いのが悲しい…)
「はー…手があったまります♪」
手にした厚紙製のタンブラを両手で包むかのように持っていた。
「相変わらず留奈サンは冷え性ですか…」
「はい、毛糸は手放せません♪」
「うわ!」
そこでまた危ない仕草とろうとしなくていいから…
「天気も崩れそうだというのに」
「本当、そうですねぇ…」
ビルとビルの隙間から空を覗う。
雲が黒かったのは、さっきまでは港にいたせいだろうと思っていたけど、どうやらこの雲は本気らしい。
今にも何か落っことしてきそうな…そんな迷惑なやる気満々な感じ…
”ぽ”
「あ…」
”ぽ、ぽ…”
「お…」
激しくは無いが、確実に水のようなモノを、お互い額に感じた。
「きたな…」
「きましたね…」
徐々に水滴と水滴との間隔が短くなり、全部をあわせてほぼ断続な状態に…
店の中に戻ろうとしたが、同じくガーデン席にいた連中も中に入り、いつの間にかスタンディングでも満席状態となっていた。
「軒下かな…」
「ですね…」
出っ張りの少ない軒の下に、2人突っ立ってみる。
でかいのは困りモノだけど、こういう時に自立出来るケースは大変有難い。
「多分止みそうですよ、向こうの空明るいですし♪」
「本当だ…さっきまでいた辺りだなぁ…」
「そ、そうですね…あはは…」
もしかして俺たちを追いかけてきてたりしないか?
雨脚は強くも無く弱くも無く…こういう微妙に判断の付かない降り方というのが、実は一番困ったりするんだが…
「あ…」
「ん?どうかしたか?」
留奈の視線がはるか向こうの交差点へ向けられていた。
「音羽さんが渡って…」
「わぁ!」
思わず頭を押さえてしまったじゃないですか!?
(なんでよ?)
「もう行っちゃいました」
「何故あの人が休日の昼間に…しかもこんなトコへ?」
あのお方の行動を把握している訳ではないが、普通こういう時間は寝る時間…と、本人が言ってたような気がする。
「あ…でも、違うかも」
「…へ?」
「エプロンしてました…」
「ぞっ!」
「ちゅーりっぷがプリントされてたみたいな…」
「ぞぞっ!」
あの方のそのようなお姿も怖いが、そこまで見分けられたアナタの視力も凄いと思います…
(50m位離れていると思いますし…)
「それと…」
「…あい?」
「…」
何か言いかけたが、そのまま言葉を飲み込み…
「ち、違いますよね、多分…あははは…」
「そ、そうだよな…あははは…」
この娘もよく判っているようで、必死に笑顔を保とうとしているが、口が笑って無い。
そんな俺もきっと同じような顔だったと思うけど…
「…」
留奈は知らないが、以前、耳が4つあった音羽サンの姿を思い出していた。
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