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No.455「あのね~♪」

No.455[あのね~♪] 毎月第1土曜の夜。銀座にライブを聴きに行く日。

「遅い…」
待ち合わせの時間はとっくに過ぎていた。
あと10分遅れたら、第1セッションを聴き逃すどころか、予約していた席もキャンセルされてしまう…(そういうシステムだ)
「うー…どうしたんだぁ!一体!?」
焦る俺の肩を後ろから何者かが叩く。
"ぽんぽん"
「ん?」
「おまっせ!」
「うおー!!ようやく来たかぁ!!」
そこには特に悪びれた風もなく、いつもの通りニコニコしながら笑っている彼女…
「うん、ちょーどだね♪」
時計を見ながら言う…
「バカ言え!もう10分遅刻しているじゃないか」
「えっ?待ち合わせは18:30だよね?」
「そーだ、今はもう18:40だー!」
俺は自分の腕時計を指差しながら言う…お互いの時計が並んだ
「ズレている…」
「あ、本当だ~。私の18:31」
見ればお互いの時計は違う時刻を示していた。その差約10分。
「おまえのが送れている!」
「えーっ!」
「えーっ!じゃない!」
「だってー!」
「だってー!じゃない!」
「ほら…」
「ほら…じゃ…え?あ?」
彼女が指し示す方向には駅の時計が構えていた。
"18:31"
明日の天気の表示と並んでいる時計の示した時間だった。
「あれも遅れている!」
「そんな~」
「んじゃ、俺はタイムスリップしてしまったのだ!!」
"ポカッ"
彼女の鉄拳が当たる。

「ところでさー」
ライブの店に向かおうとした時、彼女が話し掛けてきた。
そこには彼女がいつものポーズをとっている…
そう、こうやって手を前に持ってきて、わくわくするポーズだ。
「却下!」
「まだ何も言ってなーいっ!」
「言うな!おまえのそのポーズは危険信号なんだっ!」
このわくわくポーズ…このポーズをとるときは、決まって何か欲しいものがある時…その"おねだり"の前兆現象なのだ。
「あのね~♪」
「言うなっちゅーに!」
「かーいーサングラス見つけたの~♪それとセーター♪」
「かーいくないっ!」
「フレームにね、お花が付いてんだよ~♪」
「日よけにお花は関係ないっ!」
「あうっ!」
こういう時はノッてはいけない、一言一言をその場で否定してやらねば、あらぬ方向へ話しが進んでしまう。
「ほらほら、もうライブ始まるから行くぞ」
「えっ!?あっ!待ってよ~さんぐらす~」
「夜は必要ない!」
そう言ってダッシュをかけようとした俺、しかし次の瞬間、
「うわ!」
思わず転びそうになる。
このままでは尻餅を付きそうな体勢を強引に起こす…しかし今度は前のめりになった体勢を背筋で叩き起こす…まるでタコの踊りだな…
「おぉ~」
後ろでパチパチと手を叩き、関心している…こ、この…人の災難を…
「あ、ほらほら」
「ん?あ、あぁ…」
見ればいつの間にか雪が降り出していた。俺が転びそうになった原因はこれか…
「雪だね~」
「出かけるときは晴れてたんだがなぁ…」
駅の時計横、明日の天気の表示は雪だった。
「今夜から降るか…」
「積もるといいね~」
「俺はいいが、おまえは困るだろうな…」
「うにゅ?」
「俺は帰りは地下鉄、おまえはJR…陸上ルート。積もったら止まるぞ~♪」
「楽しそうに言わないでよ~」
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