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No.511「GREENGREEN!」

No.511[GREENGREEN!] 「あ゛ー…」
思いっきり夏風邪とゆーやつをひいてしまった気がする…
まぁ、熱が無いのと咳きこむようなコトが無いのは有難いのだけど、この喉のガラガラ感が…
「長引くんだよなー…って、もう2週間だし~…」
夏前である、このトコロ不摂生して肥えかけている体を絞り込んでおこうと思ったのに…
「ようやく晴れたけど、まだ梅雨の中休みだって?」
また週末崩れるとか何とか…

”がささ…”

「ん?風?」
頭上の木々が揺れ動いた気がした。
しかし、特に風はなく…ここにあるのは…
「俺の風邪だけ…」
………
背中が寒くなってしまった…

「ね、熱の出ない内に帰ろう…」
洗濯に布団干しに掃除に、でもって買いだし等などと、この晴れ間を使ってやるコトはいっぱいある。

”がささ…”

「…?」
やっぱ何か聞えて…

”ぷぷ…”

「…風じゃないモンが吹いている…」
何か違うぞ?

”ぷ…わ!ひや!”

次の瞬間、俺の頭上にあった木の枝から、何かが落ちてきて…

”べしゃ”

「…」
「…うぅ…」
「…」
「…い、いたかった…」
「…」
「…で、でも…ぷ…」
思い出し笑い?
何かそんなにも面白いコトでもありましたか?
「…まさか…」
向こう向いて背中丸めてる。
手の位置から察するに、お腹を押さえているのだと思うし、微妙に肩も震えておられる…
「…風邪」
「ぷー!」
今度はのたうち回っている…
感動して頂くのは有難いが、こんなヲヤヂギャグにもならんモンに…

「はぁはぁ…く、苦しかった~♪」
とか言いつつ、語尾が上がっているじゃないですかい?
「意表を突かれちゃいました♪」
「そんなに面白かったですか?」
「はい♪久々に♪」
この現代社会に、まだヲヤジギャグが通用する地域が残っているのか?と、こっちが逆に驚いてしまうじゃないですか?
「ところで…」
「はい?」
「木の上で何を?」
むしろこっちの方が意表かもしれませんが?
「…梅雨も終わったみたいなので…」
「は?」
木登りシーズン到来!?
新たなスポーツ競技!?
いや、にしては恰好が怪しいのではないでしょうか?
「その格好でよく登れますね…」
「登る?」
「はいな」
「違うよ、飛んできたんだよ~♪」
「…」
目いっぱい明るい笑顔で…手を広げながら、鳥だか飛行機のマネを…
いや、もしかして落ちた影響?
いやいや、あのウケ方といい、もしかして…天然な…
「もしもし?」
「…」
「なんか視線が怖いんですけど?」
「あ、す、すみませんです…」
いかん、凝視していたらしい。
「と、飛んで…ですか…」
「ここで休んでたんです…そしたら…」
「たら?」
「…ぷぷぷ…」
あー…今度は腕をブンブン振り回しながら泣いてらっしゃる…
でもって、何回かその辺を回って後、また俺の前に戻ってきた。

「はぁはぁ…と、とっても苦しかった~♪」
だから、語尾が上がっているってばよ?
「あ、そろそろ行かないと」
さっきまでの行動が嘘のような、まるで別人の普通の笑顔でそう語った。
「お急ぎかね?」
「うん、もう夏だし♪」
「でもまだ梅雨は明けてないみたいですが…」
「明けてからじゃ遅いからね♪」
木登りに梅雨も夏も関係無い気がするけど…まぁ、濡れてたら登り難いだろうけどねぇ…
そして向こうを向いたその子は…
「それじゃね」
「へぇ、行ってらっしゃ…」

”ひゅん”

「ばいばい」
「…ば…いばい…」
………
ただ見上げながら手を振るしか出来なかった。
その姿がそびえ立つビルの向こうに消え去るまで…
「…本当に飛んでるよ?」
意表通り越してしまったような気が…

そしてそこに残っていたのは、雨あがりに香る、あの夏の匂い…
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