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No.469「空に舞う憶い」

No.469[空に舞う憶い] 「いた!」
俺の後ろを歩いていた彩さんが大きな声をあげた。
「何をそんなでかい声を…わっ!」
振り向いたそこには、いつもより背丈の伸びた彩さんの姿が…
いや、伸びたとゆーより、頭に何か乗っている。
「な、何か当たった~ヽ(;_;)丿」
当たったとゆーより、乗ったままなのだが…
「頭に飛行機が落ちている」
「えぇっ!?そんな重たいのがぁ~!?」
勿論冗談だってのも判ってるだろうが、突然の出来事だ、鳥さんの落し物とでも思っているのだろう、恐る恐る頭に手をやり、髪に挟まっている何かに気付いた。
「あ、あれ?飛行機…?」
「だから言ったろ?飛行機が落ちてるって」
「紙飛行機だよぉ!」
そりゃ本物なんか落ちてたら大変なこっちゃ。しかし、どこから飛んできたのやら…
俺達2人は、音羽さんの家に行く途中だった。もう間もなく彼女のアパート前というところでの出来事。
「この紙、何か書いてある…」
「ん?どれどれ?」
折り曲げられた紙を広げてみる、と、そこには…
「楽譜じゃん…」
五線譜に音符が並んでいる、しかしあちこち書き加えてあったり、中には1行丸々塗りつぶされてるような箇所もあった。しかも手書き。
「うわ、すご…」
関心しながら眺める彩さん。しかしだ…この辺りでこんなモンを紙飛行機にして飛ばす奴なんて…1人しかいない…
「よぉ」
頭の上から今度は声が落ちてきた、やはり案の定だ。アパートの2階、ベランダに腰掛けてこちらを伺う影1人…
「音羽サン…」
「いや~、見事に当ったな、彩♪」
「もー、狙って飛ばしたの?」
「うまいモンだろ?」
んな、別に自慢しなくたって…
「いいんすか?こんな大事なモンを折って飛ばしちゃって…」
「いいんだ、捨てるやつだから」
「え?」
その時だった、今度は俺めがけてもう1機飛んできた。しかも今度はボディがシャープだ、一直線、ストレート、ど真ん中。
”ブスッ”
「ぐわぁぁぁ!」
「そこに突っ立ってるとイイ的だぞ?上がってこいよ」
そう言いながら音羽さんは3機目を折り始めている。しかも念入りに先端を強化しつつ…
「急ぐぞ!彩サン!」
「わ!桂さん待って!」
慌ててアパートの階段を駆け上がる。
そして、ふと見た音羽さんの部屋の窓から、赤い夕日の空に向かってゆらゆらと舞う紙飛行機が目に入ったのだった。
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