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No.509「Sound of Streets」

No.509[Sound of Streets] 「いいお天気♪」
「ずるー…」
「晴れ渡る空♪」
「ずるー…」
「…香る杉の花粉…」
「げほげほげほーっ!」
拷問だ…

昨日は雨だった、天気予報で今日は晴天と言われていた。
よって、部屋を完全に密閉状態として、夜呑みに出るまでやり過ごすつもりだったのに…
「健康的じゃないよ?」
「健康な人だから花粉症になるのだ」
いきなり押しかけてきて、そのまま連れ出されていた…
「私なってない…」
「その内、俺の苦労が判る日が来るさ…」
近いのか遠くないか判らない先を、遠くそうな目で見てみる…
「よくコップの水に例えられるよね♪」
楽しそうに言ってるのも今の内である…

「…ところで…?」
「は?何ざんしょ?」
「何か楽器使えたっけ?」
「あい?」
自慢じゃないが、聴くのは好きだが楽器は扱えない。
それはこやつも知ってるハズなのだが…
「もしもし?」
「ん?」
「どこから持ってきた?それ…?」
見れば何気にドラムのスティックなんぞ持ってるじゃないか?
こやつも俺同様に楽器は出来ないんじゃなかったっけ?
「君の部屋にあった♪」
「…げ…」
「ドラム叩くの?」
そう言えば、前にドラムやってる友達が忘れていったんだ…
商売道具忘れてどうするよ!?って、その時思ったけど、常に予備も持ち歩いてるから、直ぐには困らないとか…
「友達の忘れモノだ…」
「そうなんだ…」

”かつかつかつかかつかつかかつかつかつかつか…”

壁叩いてますよ…ポスト叩いてますよ…電柱叩いてますよ…
「これこれ、器物破壊はいかんぞ?」
しかもリズムになってない…
「そう言えば…」
「はい?」
「こんなCMが前にあったよね?」
器物破壊しまくるCM?重機のCMか?ビル解体業者のCMか!?

”かつかつかつかかつかつかかつかつかつかつか…”

「…あ…」
脳の下の方から、何やら発掘した…
「もしもし?」
「ん?」
脳の下から発掘された映像が前頭葉で再生されたが…はっきり思い出せない位古いぞ!?
「お幾つになられましたかね?」
「平成生まれ♪」
まぁ、懐かCMとか観て言ってるんだと思うけど…
リアルタイムじゃ観てるハズ無い…
「何か言いたげな顔してる…」
「気にしないでください…」

”かつかつかつかかつかつかかつかつかつかつか…”

だからズレてるってば…

「あ、そうだ…」
「ん?」
「片方貸してみそ?」
1本を受け取りそれを少し違う格好で構えてみる…
「それで打てるの?」
「ふふふ、まぁ見ていたまえ…」
そのまま腕を振り下げ、微妙な手首のスナップを効かせならがスティックを手放す…
”かつ”
地面に落ちたスティックは水平方向を保ったまま、持っていた手に戻ってきた。
「わ」
「ふふふ…」
「そ、その位出来るよ~!」
同じように構え、地面に叩きつけるが、跳ね返って戻るコトは無く…
”ぺき”
”ぱき”
情けない音や甲高い音だけが鳴り響き、地面を転がってばかりだった。
その姿を他所に…
”かつ”
「わ!高い!」
俺の頭上にまで跳ね返ったのを見て驚いている♪
「ど、どうして跳ね返ってくるの!?」
「演奏終了時に、毎回このキメをやるドラマがいたんだ♪」
「真似たの?」
「かなり練習した♪」
これが出来る人は、俺の知る限り相当少ない。
「だったら…」
「ん?」
「ドラムの練習すればいいのに…」
「…げ…」
正論だ…が…
「自分だって楽器出来ないのに…」
「なにおー!」
”ぷにゅ”
「わあぁぁぁ!」
唐突に鼻をつままれ…
って、今この症状の俺にとってそれわーっ!

晴れ渡る空に…
”ぱき”
情けないスティックの音と…
「くしょ!くしょ!くしょ!く…」
俺の3回転半のくしゃみの声が…
吸い込まれて行った。

春は近い…
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